切腹特区


切腹特区 1話はこちら

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バスがゆっくり停車する。「プシュー、ガタン」ガラガラのバスのドアが開き、1人の男が降りる。色あせたボロボロの黒いパーカーに穴の開いたジーンズ。無精髭に、自分で切ったであろう髪はボサボサの不揃いで不格好。白髪も混じっている。表情筋を3年間使ってないような顔をしたその男はやたら広い駐車場をとぼとぼ歩きスーパーの中に入って行った。


この能面のような顔の男の名前は山崎ヒカリ。


元々この男は岡山に住んでいたが、あることがきっかけで鳥取に引っ越して来たのだった。いや、引っ越して来たというよりは戻って来たという方が正しい。


スーパーでは子供の駄々っ子に苦戦している母親やお祖母ちゃんの姿があちこちで見られた。うるさいが鳥取に来て3年。もう慣れた。そんな姿を横目で見つつ、もやしや肉の値段を確認しながら、ヒカリはスーパーの中を周る。キラキラした目とキラキラした姿をした人達が自分を汚物のような目で見る。そう感じながら結局はいつもの食材をカゴに入れ、レジに列んだ。周囲の目線を気にする素振りも見せず淡々とセルフレジで会計を済ませて、食材をガサゴソとレジ袋に入れる。


切腹特区 3話
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