早速ヒカリは時計のベルトを探しに市内に出掛けた。昔はどこもシャッターが閉まったさびれた商店街だったが、新しい店舗が入るようになっていた。生前退世制度の恩恵がここにも表れている。
「へえ、かなり古い時計だな。これ結構しそうですね」
「いや、全然高くないものらしいっすよ」
ヒカリの相手をしているのは時計店のオーナーだ。オーナーは派手な柄シャツにベストを着ていた。オーナーのヒゲは立派で胸まであり、"ヒゲ店長"とあだ名が付いている。
「いらっしゃい」ヒカリとヒゲ店長が会話していると、20歳前後の男女が店内に入って来た。
「このベルトなんてどうかな?」ヒゲ店長が勧める。
「ああ、良いですね。合わせてみていいですか?」
黒地に濃く青く光るベルトがシックでヒカリは気に入った。
「これにします」少し嬉しそうにヒカリは言った。
「似合うね。これサメ革を使ってんだよ。この時計付けて帰るでしょ?」
ヒカリはロレックスの腕時計を左手首に付けて店を出ようとする。後から入って来た男女の男の方の視線の先には、ヒカリの腕時計があった。
切腹特区 17話
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